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COACH K'S BLOG

倉石 平のバスケットボールブログ 週1回、毎週木曜日アップ!
インタビュー企画② ヨーロッパを中心とする世界のバスケについて

この企画では、倉石さんに世界のバスケットボールについて、またその中でのSPALDINGの立ち位置について語っていただきました。

2回に渡ってお届けする2回目は、主にユーロリーグや世界のバスケ情勢について語っていただきました。

インタビューアーはスポルディング・ジャパン株式会社の中山が務めました。

※1回目のインタビューをご覧になりたい方はこちらから

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中山:

現在、アメリカだけでなく世界中でレベルの高い試合が繰り広げられています。その中でユーロリーグやスペインリーグなどのプロリーグは、どのような立ち位置にあると言えますか?

 

倉石:

プロリーグについて話すより前に、ヨーロッパにおいてはまず育成について話をしないわけにはいきません。

ヨーロッパでは一昔前まで、若く優れたエリート選手をアメリカに送り込み育成するという方式が多く取られていました。代表例で言うと1970年代にドイツから海を渡ったデトレフ・シュレンプ(元シアトル・スーパーソニックス他)です。あの時代は自国でくすぶらせるよりも、高校生などの若い時代からアメリカに送り込み、本場で揉まれて育てるという方式でした。現在もこの方式での育成がなくなったわけではありませんが、とても稀になっています。最近ではアンドリュー・ボーガット(NBAゴールデンステイト・ウォリアーズ)くらいだと思います。

アメリカはとても選手が多く層も厚い。育成するのではなく、選手自身が這い上がっていかなければいけない世界で、良い選手以外は切り捨てていきます。生き残ればすごい選手になりますが、その分とてもリスクが高く、消えていってしまう選手も少なくありませんでした。また、身体能力に勝るアメリカの選手と若いうちからプレーしてしまうと、体が出来上がっていないので怪我をしたり、スピードに追い付けずフラストレーションを抱えて選手自身がダメになったりすることもありました。

ですので、現在のヨーロッパの育成方法は全く逆で、アメリカには出来るだけ出さずに育成しようとしています。ヨーロッパはアメリカほど選手の数が多いわけではなく、『選手を育てる』という価値観をとても大事にしています。特に有名なのがスペインのバルセロナです。バルセロナというとサッカーが特に有名ですが、下部組織の選手たちはサッカー、バスケ、ハンドボール全員でスポルティーバにある同じ寮で暮らしています。サッカーが70人ほど、バスケが15人ほど、ハンドボールが56人ほど在籍しています。

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ジュニアカテゴリーの練習風景

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ジュニアカテゴリーの試合風景


中山:

すごい世界ですね。その子たちはその子たちで、とてつもないエリートです。

 

倉石:

その子たちはスペインだけでなく、世界から集まったエリートで、13,4歳くらいから18歳くらいまでをその寮で過ごします。ヨーロッパでは、バスケでもこのような育成方式を取っているところが増えてきています。

最近スペインのコーチが言っていた言葉がとても印象に残っているのですが、彼は『アメリカは才能で勝っている、しかし戦術戦略やスキルに関しては、絶対にスペインの方が上だ』と言い切っていました。私はその言葉を100%信じているわけではありませんが、彼らの育成に関する確固たる自信は伝わってきました。

論より証拠ではありませんが、最近のオリンピックでは2大会連続でスペインが決勝に残っています。どちらもアメリカに負けてはいますが、点差は年々詰まってきている状況です。1992年のバルセロナオリンピックでのドリームチーム結成の時は、アメリカはどの国にも圧倒的な勝利を収めていましたが、近年では楽に勝てる試合はほとんどないと言ってもいいでしょう。

最近のNBAでは各チーム、センターにヨーロッパの選手を置くことが多くなり、アメリカ代表に優秀なセンターがいなくなってしまいました。

 

中山:

慢性的なセンター不足は、アメリカ代表の大きな問題です。

 

倉石:

1992年以降、アメリカ人の優れたセンターと言えばシャキール・オニール(元ロサンゼルス・レイカーズ他)くらいです。2000年以降の代表チームではティム・ダンカン(サンアントニオ・スパーズ)がセンターを務めたりしましたが、彼も本業はパワーフォワードですから。

NBAではすっかり、優秀なセンター=ヨーロッパ人、という図式が出来上がってしまいました。さらにNBAだけでなくその下のカレッジの世代でも、各大学のスカウトは優秀なセンターをリクルートしにアフリカやヨーロッパに行っています。

 

中山:

ヨーロッパのレベルが年々上がってきているというのが、これだけでも分かりますね。

 

倉石:

おそらくヨーロッパのトップチーム、それこそバルセロナやレアル・マドリッドだったらNBAの下位チームには勝つと思います。特にサイズはヨーロッパの方が大きいです。

 

中山:

ただサラリー(給料)の面ではNBAの方が上を行っています。やはりヨーロッパの選手はプロになると今でもNBAを目指してプレーしているんですか?

 

倉石:

一時期はその傾向がとても強かったと思います。ファン・カルロス・ナバーロ(元メンフィス・グリズリーズ他)やルディ・フェルナンデス(元ポートランド・トレイルブレイザーズ他)などです。現在でも残っている選手で言うとホセ・カルデロン(現ダラス・マーベリックス)がいます。彼らは元々母国のスペインでプレーしていましたが、NBAに移籍しました。ただ最近では、このような選手たちも母国リーグに戻る姿を良く目にします。理由としては、プレーの環境にあると思います。NBAではどうしても『外国人』として扱われ、自分の好きなバスケが出来ないことが多いです。それなら母国のリーグに戻って自分のしたいバスケをして、コーチと納得のいくまで突き詰めながらプレーした方が、楽しく選手としてのキャリアも充実したものを過ごせ、お金よりもそちらを優先する選手が増えてきました。さらにスペインリーグもNBAに負けずレベルが高く、国内での人気はものすごいですから。

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バルセロナの試合開始直前の様子


中山:

そうなるとヨーロッパでは、ピラミッドで言うとNBAが頂点ではなく、自国のリーグと並列に近い位置で見ているということですね。

 

倉石:

そうですね。サラリーが多い分だけ、NBAの方が少し上にいるかなというくらいだと思います。

 

中山:

ユーロリーグやスペインリーグで使われているSPALDINGのボールについてはどう思いますか?

 

倉石:

チャネルが深く、とても扱いやすい印象です。特にシューターにとっては指が引っかかるので良いと思います。ここ数年でスペインやイタリアなどのヨーロッパ主要プロリーグがこぞってSPALDINGのボールを採用していますが、その事実がボールの品質を証明していると思います。

ユーロリーグに出場しているチームなんかは、母国リーグだけでなくユーロリーグでもSPALDINGのボールを使用しています。試合によってボールが代わるというのは普通であればとてもストレスとなり得ますが、クレームのようなものは聞いたことありませんからね。

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ユーロリーグの公式球を手に語る倉石さん


中山:

現在、NBA、ユーロリーグ、スペインリーグと世界のトッププロリーグはSPALDINGのボールを採用しています。世界の主要3リーグがSPALDINGを採用しているという事実をどう思いますか?

 

倉石:

SPALDINGにとって、とても大きな意味があると思います。世界のプロ選手のほとんどはSPALDINGを使っていると言っても過言ではありません。世界中から注目されている3つのリーグでSPALDINGが使われていて、世界中の選手がそこを目指していますから。逆を言うと、世界を目指すならSPALDINGを使わないと、という流れになっています。

話が少しずれるかもしれませんが、日本でもユーロリーグやスペインリーグの試合を放送してほしいと考えています。現在は、どこも放送していません。日本のバスケを考えると、ヨーロッパと同じく国際ルールに則っています。NBAは細かいですが特殊なルールがいくつか存在しており、その分日本人にとってはヨーロッパのバスケの方が見やすいと思います。是非日本の方々にもNBAだけでなくヨーロッパのバスケも見てもらいたいです。

 

 

2回に渡ってお届けしたインタビュー企画はこれにて終了となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

またこのような企画を行っていこうと考えておりますので、ご意見ご要望がございましたら是非ご連絡ください。

ご意見ご要望はこちらまで→info@spalding.co.jp

 

次回をお楽しみに!

2014/05/29

NBAカンファレンスファイナル決まる

 NBAもいよいよ最後の決戦に突入しつつある。現在東西カンファレンスのファイナルが行われている。今シーズンのプレイオフは、あわやアップダウンばかりではないかと思われるほど激戦ばかりであった。しかしここまで来ると、最後のベスト4になってみると、東西の第1シードと第2シードの上位4チームが見事勝ち抜き、下馬評通りという結果となった。イーストの第1シードのインディアナ・ペイサーズは、1戦目から接戦に次ぐ接戦で、第8シードに敗戦すると言われるほどの、いわば徳俵に足がかかるほどであった。ウエストの第12シードもそれぞれそれなりに危機的状況をかいくぐって見事な進出である。

唯一初戦から危なげない勝ちっぷりをしていたのがイーストの第2シードマイアミ・ヒートである。連覇がかかっているだけに皆注目している。

 

 そして現在進行中が東西のカンファレンスファイナルである。それぞれの第1シードが貫録を見せ見事な初戦を飾ったが、その陰にはそれぞれ憶測が飛び交うのである。まず、イーストのヒートであるが、レギュラーシーズンの終盤ペイサーズとシード権争いをしていた、ところが終盤苦戦をしていた、しかもチーム事情最悪であったペイサーズに、敗戦という形をとってしまったのである。これが連覇に対する最悪な条件のような気がする。ホームで圧倒的な勝率を誇る両チームだけに、このシード権争いがそのまま勝利に影響するように感じる。初戦はそのままペイサーズが自らの強みを発揮、高さでヒートを圧倒してしまった。この高さ対策を2戦以降ヒートはどうするのか、とても興味のある戦いでもある。そしてウエスト、ここはレギュラーシーズン上位にほぼ負け越していた、第1シードのサンアントニオ・スパーズ、ベテランぞろいでもありわざと敗戦していたとも言われているが、(上位に敗戦するものの下位に絶対的に敗戦しない、取りこぼしをしないという格好で勝率1位をキープした戦いぶりを指す。)ここにきて負け越していた、オクラホマシティサンダーに120点を超す大台で勝利。まさかサンダーにとって点取りゲームで敗戦すると思っていなかっただけに、ショックは計り知れない。

 

 これからまだまだ続くと思われる戦い、このままでは終われないはず、しかも2-2-1-1-1というホームを順番に換えての戦いだけにホーム有利と考えると、終盤まで目が離せない。ここ数年のプレイオフは、ホームコートアドバンテージが優位に働かないこともあっただけに、次からの戦いが注目でもある。

2014/05/22

インタビュー企画① バスケとNBAの歴史について

この企画では、倉石さんに世界のバスケットボールについて、またその中でのSPALDINGの立ち位置について語っていただきました。

2回に渡ってお届けする1回目は、主にアメリカやNBAについて語っていただきました。

インタビューアーはスポルディング・ジャパン株式会社の中山が務めました。

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中山:

バスケットボールの歴史について教えてください。

 

倉石:

バスケットボールはアメリカのマサチューセッツ州で生まれたスポーツですが、その技術に革新が起きたのは『シームレスバスケットボール』が出来てからだと言われています。文字通り、縫い目(シーム)が無いバスケとボールです。当時ニューヨークの自転車産業が盛んで、自転車のチューブからヒントを得たと言われています。

 

中山:

シームレスバスケットボールとそれまでのボールというのは何が大きく違うのですか?

 

倉石:

バスケットボールに限らず球技について全て言えるのですが、元々は太陽や月に見立てたボールを争うところから始まっており、大きな熱狂を巻き起こしていました。しかし当時は牛の膀胱(ぼうこう)などを膨らませたものをボールとして使っており、真円には程遠かいものでした。シームレスバスケットボールが登場してからは真円に近いボールでプレーすることが可能になり、競技スキルもどんどん向上していきました。

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アメリカのHall of Fame(バスケの殿堂)に飾ってある1920年代のバスケットボール

上部に縫い目(シーム)があるのが見える。

 


中山:

世界最高峰のバスケットボールリーグ『NBA』のこれまでの歴史について、倉石さんはどうお考えですか?

 

倉石:

長い歴史を持つNBAですが、今から約30年前の1983年にデイビッド・スターンがコミッショナーになってから大きく変わったと思います。彼はNBAをきちんとした『スポーツ産業』に引き上げてくれた功績者です。そういう点で、当時のSPALDINGはデイビッド・スターンの方向性に合致し、その年からNBAの公式球となったと言えると思います。

 デイビッド・スターンは、バスケットボールをいかにメジャーにするか、どうやったら人を惹きつけられるかをものすごく考えた人でした。デイビッド・スターンがNBAのコミッショナーになった当時は、ほとんどの選手が黒人で、白人の子供はバスケットボールに対する夢や希望というのが薄れていっていました。プレーするスポーツではなく、観るスポーツという位置づけになってしまいました。そういった状況下で、白人をもっとバスケットボールに引き込みたいという想いから、当時ほとんどの選手が白人であったヨーロッパに目をつけ、そこのチームと試合をやろうと行われたのが『マクドナルドカップ』でありました。1999年を最後に、この大会は終了してしまったのですが、野望としてはサッカーのトヨタカップ(現クラブワールドカップ)のようにしたかったのだと思います。ヨーロッパ各国の優勝、準優勝のチームとNBAのチームがトーナメントをする形式だったのですが、NBAのチームが負けることは一度もありませんでした。この大会を通じて、NBAは世界No.1リーグで給料も一番高いというのが世界中に広まり、ヨーロッパの優秀な選手がこぞってNBAに行きたがる世界が出来上がりました。ヨーロッパでは、NBAで自分がどのくらいできるのかやってみたい、という選手が増えました。その代表例として上がるのがマイケル・ジョーダンとNBA3連覇を果たしたトニー・クーコッチでしょうか。

 

中山:

これまでの流れが、今日のNBAを作り上げているんですね。

 

倉石:

元々世界No.1リーグと言われていたNBAですが、このヨーロッパからの優秀な選手が集まる流れが出来てさらにその地位を確固たるものにしたと言えます。結果、放映権料も上がり、NBAを放映する国もうなぎ上りに増えていった。みんな自国のスターがNBAで活躍する姿を見たいですからね。ただ、その当時もっともお金を払っていたのはNBA選手を輩出していない日本でした。

 

中山:

シカゴ・ブルズが優勝した辺りは日本でもNBAブームでしたよね。オールスターが民放で放映されたりしていました。

 

倉石:

そうですね。テレビ朝日やTBSで放送していました。私も何度も解説として出演させていただいたので良く覚えています。その頃は、レギュラーシーズンの開幕戦を日本で行ったりしていました。

しかし開幕戦を時差の大きい日本で行うとそのチームに負担が大きいとの理由から、日本には来なくなってしまいました。NBAのマーケットが中国へ移ったこともあり、現在は中国でプレシーズンゲームが開催されたりしていますが。

 実はオールスターゲームを始めたのもデイビッド・スターンでした。このように、バスケ先進国ではない日本でもブームを巻き起こすなど、NBAをここまで大きくワールドワイドにしたのはデイビッド・スターンの功績がとても大きいと思います。

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中山:

確かにデイビッド・スターンの功績は大きく、今や世界中にNBAのオフィスがあります。そのデイビッド・スターンと同じ年にNBAの公式球となったSPALDINGですが、倉石さんはこのボールについてどう思いますか?

 

倉石:

持った瞬間の肌触りがよく、滑りにくいのがすぐに分かりました。昔ながらの8面体なのでパネルによっての手触りに差異が無く、キャッチミスやハンドリングミスなどの細かいミスがしにくいように感じます。

8面体が好まれているというのは世界の流れを見ても分かります。世界の主要プロリーグがこぞってSPALDINGにボールを代えていますから。

何よりNBAの選手たちだけでなく、世界中から絶大な支持を受けているというのがこのボールの特徴と言えるかもしれません。

 

次回はユーロリーグやスペインリーグについて語っていただきます!お楽しみに!!

2014/05/13

プロバスケットの終盤

 ヨーロッパの王者を決めるユーロリーグが終盤を迎えている。

ファイナル4の戦いが5月16日セミファイナル、18日にファイナルが行なわれる。組み合わせは、FCバルセロナ対レアルマドリットのスペイン対決。一方の組み合わせはシェスカモスクワ対マッカビエレクトラ、ロシア対イスラエルという対戦となった。ここ数年必ずやといえるほど顔を出すのが、このスペイン2チームとロシア勢、そして従来はギリシャであったのが、ここ数年力をつけてきたイスラエルが今回は出場。勢力図の書き換えが行なわれた感じである。クラブ自身の力の入れ様、それには国の経済状況がそのまま反映している感も拭えない。ここ2週間くらいの準備が、たった2日間の戦いに優劣をつけることになる。


アメリカは、先週も述べたが、NBA(世界最高峰のリーグといわれている)のプレイオフが始まった。しかも今年は何か従来とは異なるような戦いぶりである。上位シードのチームが苦しんでいるからである。アップセットされてしまったシカゴ・ブルズのようなチームもある。ウエストのオクラホマシティ・サンダーも現在2勝3敗、メンフィス・グリズリーズに先行されている。しかも王手をされてのネクストゲームがメンフィスのホームゲーム、まさに崖っぷちと言った所である。また、サンアントニオ・スパーズもレギュラーシーズンであれだけ勝率の高かったチームが、8位でやっと出場したチームに悪戦苦闘、現在2勝2敗のタイである。

今シーズンのプレイオフは、従来とはまったく異なるまさにトーナメントといえるほどの一戦一戦が目を離せないほどの戦いとなっている。連覇を狙うマイアミ・ヒートのみが楽勝で2回戦(カンファレンスセミファイナル)へ進んだが、後はまったく団子状況、観ている我々にとっては最高の戦いぶりであるが、やっているコーチングスタッフ、プレイヤーは心身ともに苦しいのは言うまでもない。先ほども述べたグリズリーズ対サンダーは、ほとんどのゲームが延長という、これも珍しい記録でありどうなるのかまったく検討すら立たない。

最後にわれわれ解説者にとって、接戦だけに解説の面白みはあるが、ある程度計算できるところもなくなると、ただ単にファン心理になってしまうのは悲しすぎる。したがって従来以上に下調べが重要になってくる今シーズンでもある。

2014/05/01